ネパールNGOスタッフ学校設立に向けて

2010年5月27日木曜日

世界経済グローバリゼーションの危機1

15世紀の大航海時代以降、世界の経済はグローバリゼーションという大きな流れにのって、発展と拡大を続けてきた。
しかし、現在このグローバリゼーションが重大な危機を迎えている。大恐慌時のブロック経済化や米ソ冷戦時代の世界二分化とにらみ合いとは根本的な原因が違う。グローバリゼーションとしてのシステムの破綻である。
グローバリゼーションはそれぞれの時代において果たしてきた役割があり、その光と影は世界に大きな影響を与えてきた。しかし、現在の世界が抱えている問題は、貧富の二極化を極大化する。そして、世界中の投資家たちの膨大な投機マネーが電子のネットワークを介し超流動的に運用されるということは(暴走?)、各国の通貨政策を無力化し通貨の暴落と国民生活の破綻を引き起こす危険性がきわめて高いことから、否定的な意見を持つ人達が増えている。

まず、近年のグローバリゼーションは、多国籍企業が開発途上国と呼ばれる地域にコスト削減のため、現地工場を建設することを特徴とする。投資に対する高い利潤を確保するには、工業製品製造における最大のコストである労働コストが低く、政局が比較的安定している国家への進出が重要となる。経済インフラが整っており、基礎教育が普及していれば尚好ましい。企業活動が海外に移転していった国家では工業空洞化(ホーリングアウト)と呼ばれる現象が広まり、工業労働者の賃金の切り下げや失業率上昇を引き起こす。
早い話、現在のグローバリゼーションとは労働賃金を世界最低水準まで引き下げ、一部の資本家とエリート達に富を集中させる仕組みでもある。
労働者と企業間の信頼関係を破壊し、労働者をマニュアルに従事する単なる使い捨ての生産要素とみなす風潮。会社や仕事に対する愛着や責任感を持たず、収入等の条件面のみの比較で転職を繰り返す労働者(ジョブ・ホッピング)。開発途上国では拝金主義的風潮が広まり、モラルの低下や競争社会における強いストレスに苛まれる事が多い。

通常は、長期的には先進国の賃金低下と国際収支の悪化から通貨の交換レートが下がり、国家間の経済格差が狭まることで落ち着く。各国は輸入製品に関税をかけることで、自国産業と失業率上昇を防ぐ。

しかし、アメリカに追従する日本やEC諸国の自由貿易と金融自由化過剰保護が世界の経済を限界まで歪めてしまった。
サブプライムローンに始まった金融恐慌が収まり、世界経済は回復基調にのったなどという経済評論家の話を僕は全く信頼していない。極度にグローバル化・電子化が進んだ経済を安定させる経済の仕組みはいまだ確立されておらず、マネー暴走による経済破綻は再び起こる。アメリカ、EC、日本をはじめとする世界経済の混乱と崩壊はこれから始まるのである。

日本の累積債務は一千兆円を超え、もはや通常の政策では返済不能だとも言われている。しかし保有者の大部分が日本の金融機関であることから、何とか通貨としての信頼を保っている。
しかし、アメリカの累積債務は一体どうなっているのであろうか?正確な数字が公表されておらず、オバマの政治力への期待と信頼から楽観的感想を持っている人もいるようだが、1980年代から双子の赤字として問題視され累積されてきたその総額は日本の累積債務の比ではなく、オバマの努力や才覚で解決できる問題では決してない。
EC経済に関しては何がきっかけで爆発するかわからない時限爆弾に等しい。PIIGS5カ国とは財政的に国家的破綻を目前に控えている、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインを指す。ある一国での債務不履行(デフォルト)は上記5カ国を連鎖的に破綻させる。ECはその際、運命を共にするのか、はたまた崩壊するのかという厳しい選択を迫られる可能性が高い。

現在の世界経済は密接な関係をもってつながっている。ECの危機はアメリカ、日本、そして世界のほとんどを巻き込む世界恐慌を引き起こしかねない。一体なぜ、世界はこれほど危機的な状況を招いてしまったのであろうか?

その一端は金融経済安定化を目的としたヘッジ取引が、レバリッジや空売りなどというリスクを拡大させる本来の目的から誤った金融製品を生み出し通貨や債権を不安定化させ、金融のグローバル化と電子取引による価格変動のスピード化が全世界を巻き込んだハイリスクハイリターンのマネーゲームとなってしまったことにある。

経済はギャンブルではない。通貨は国家経済にとっての血液で、必要な企業へと投資もしくは融資され、健全に運営されねばならない。個人資産は住宅積立金や傷病時の保険、老後の年金といった預金目的の違いにより、生活に必要な預金や保険ほど安全で税制上優遇された運用資産へと、高額所得者の富裕資産はヘッジ取引のような高リスクハイリターンの金融資産へと投資され、利子や配当にも高税率が課され、経済活性化のためには高額商品やサービスをどんどん購入してもらうよう仕向けねばならない。僕は中間所得層の拡大こそが国家の政治を安定させる最も効率的な手段と考えている。

これは共産主義的な思想ととられるかもしれないが、土地や、石油などの地下資源は本来個人の所有物ではない。国家もしくは世界中の人々の共有物である。
都市住宅地や商業用地・農業用地など都市計画上の用地の区分と用途ごとに税率は異なり、個人住宅なども適切な広さの土地の税率は安く、人口密集地に大邸宅を建てるなど公共目的に反する利用方法には高税率が課されるべきなのである。
石油等は、たまたま自分の国や所有する土地に埋蔵されていたから、産出されたからという理由で大金持ちになってよいものではなく、採掘等に必要な正当な労働賃金以外は環境保護や国家・世界の共有資産として扱われるべきだというのが僕の持論です。

ある国家の経済開発地区で成長が軌道に乗ったとき、土地や企業の株式に投資が集中し、実態以上に値上がりするのは経済学上の常識である。そして実態以上に価値が膨れ上がったバブルは必ず暴落する。共産主義社会については専門外なので割愛しますが、オランダ、イギリス、アメリカ、日本と歴史上例外はなかったと記憶している。
アメリカのFRBが住宅ローンバブルを放置したことで世界経済を危機に陥れたことなど、経済を学んだものにとっては必然の結果であり、ある意味国家的経済犯罪とも取れる行為である。アメリカのバブルは西暦2000年には既に注意が必要なレベルにあり、そんな状況下で金融立国を目指す?あまりにおバカな政治屋たちに頭痛を覚えたものだった。そして現在、こういう危機的状況にある国が金融機関等企業保護のために不良債権を国家が買い支えている。末期的症状と言えるであろう。

スキーでも急斜面でスピードが出すぎた時に、早いうちに上手に転べば怪我はしなくてすむ。危機的状況を引き伸ばすほど、無理と嘘を積み重ねる程、やがて来る世界恐慌は大きなものとなる。
債務不履行(デフォルト)が必ずしも国家経済を破綻させるとは限らない。不良債権の処理は債務の全体像と現在の経済状況を明確にし、関係者に公平な再建策を提示し、かつ強行することだ。その際注意せねばならないことは、個々人の不満や要求を相手にしていては話がまとまらないこと。国際社会の信頼を損なわないように誠実で確実性の高い再建プランをたて、根気強く関係者を納得させること。そして一番大切なことは国民自身が自暴自棄に陥ることなく、まじめに国家再建に取り組むことである。それらが適切な時期になされなかった時、インフレによる貨幣価値の暴落、デノミネーション、国家経済の破綻へと繋がる可能性はきわめて高い。
かつてジンバブエで起こった経済破綻はまもなく北朝鮮で再現される。ソ連経済が崩壊した時の失業や生活物資の困窮、社会の混乱はECやアメリカでも再現される可能性が高い。中国はその際アメリカに取って代わり、世界経済の中心としての地位を狙っている。その際、日本はどのような経済状況に陥るのであろうか?