ネパールNGOスタッフ学校設立に向けて

2010年5月13日木曜日

後進国の経済発展を阻害する要因

後進国の経済発展を阻害する要因はいくつもある。
気候的に極端に暑い場所や寒い土地、水が手に入らない、または内陸部で海上輸送が出来ないなどの地理的要因。近代の帝国主義による植民地政策により、自国の文化が歪められてしまった例や、独裁者が圧制をひく場合などの人的要因。(貧しい国で高価な天然資源などが発見されるとこういう事態に陥りやすい。)

経済的に発展が立ち遅れている地域では、必ずと言っていいほどこういう地理的・歴史的な問題を抱えている。それらの中には人間には対処仕様のない問題も数多くあるが、人間同士が協力すること、教育によって変えていける問題も少なくは無い。ここではネパールを例にどのように経済発展を阻害する溝を埋めていけるかについて考えて生きたい。

以前、教育の原点で書いたが、人間が高度な文明を構築しえたのは、互いに協力し、道具を使い、言語と文字によって高度な連携作業を可能とし、技術を後世に残すことが出来たからである。

一方後進国と呼ばれている地域では、上記の連携はうまく行われているであろうか?
ネパールでは、カースト制度による差別、男尊女卑が根強く、効率的な分業や役割分担を阻害している。カーストが異なると対等な立場での話し合いすらできないため、有効な協議が出来ない。また、頑張っても潤うのは上級カーストの人達のみなので、下級カーストの人はモチベーションをもちえない。政府機関やNGOスタッフも学歴のある上位カーストの人たちが多く、就職の際も親族によるコネによるところが大きい。そのため、下層カーストの人たちはなかなか経済的に発展しない。
また、国が複数の少数民族から成り立っており、民族間のしこりも根強い。多数の言語が存在し、高度なコミュニケーションが取られていない。学校に入学しても母国語以外の言語で授業を進められた場合、ついていけなくなる子供も多い。教育の重要性を認識していない親が多く、家業の手伝い等で疎かにする家庭も多い
そして、高度な協力や連携作業を行う上で基本となる、約束や時間を守ることの重要性が社会的に重要視されていない。また仕事の条件が少しでも良ければすぐに転職してしまうため、基幹となる社員が育たない。
上記理由から、計画的に物事が進まず、それを当然の事として受け入れている。

僕は日本が世界的な技術大国に成り得たのは、日本国民が優秀だったからとは思っていない。日本人が日本語という単一言語を話す民族で、協調性を大切にする文化を継承してきたこと、そして第二次世界停戦による敗戦ですべての物質的財産を失い、一致団結する必要性に迫られたからだと思っている。

一方ネパールではどうであろうか、個別には優秀な文化を伝承しながらも、ネパール国民が一致団結している光景を目にすることは少ない。(バンダやお祭り等を除いて)

上記問題の原因は地理的、歴史的要因に基づくものが大半を占める。しかし、これらの溝は住民の努力によって歩み寄らなければ埋めることは出来ない。そしてこれを解決するのは教育しかないと僕は思っている。大人や親が子供たちの前では決して差別や暴力を使うことなく生活習慣から変革する規範を示すことこと。幼児のころから、他部族との共通語を学習し、他国や他民族の優れた文化と技術を吸収し、自国の文化の長所と融合した新しい文化を創ること。

これは口で言うほど簡単なことではない。自民族の文化に深い愛着を持つ人々にとっては許容しがたいことかもしれない。しかし、文化が知的、技術的に熟成し洗練されるには、少なくとも一千万単位の民族が必要となる。少数民族が変化を拒んでも時代の流れから取り残され、貧困と差別に苦しむだけである。
後進的立場にある少数民族が、民族のアイデンティティーを失うことなく先進的立場にある文化と融合してゆくには、一部民衆に差別と貧困をもたらす慣習を断ち切り、民族特有の感性・文化を練磨してゆくことではないかと思う。

たやすい事ではない。しかしこの国で、自然と調和を保った経済発展を成し遂げることが出来れば、貧困に苦しむ多くの国々にとっても、より実現性の高いモデルプランになると思うのである。