ネパールNGOスタッフ学校設立に向けて

2010年5月27日木曜日

世界経済グローバリゼーションの危機1

15世紀の大航海時代以降、世界の経済はグローバリゼーションという大きな流れにのって、発展と拡大を続けてきた。
しかし、現在このグローバリゼーションが重大な危機を迎えている。大恐慌時のブロック経済化や米ソ冷戦時代の世界二分化とにらみ合いとは根本的な原因が違う。グローバリゼーションとしてのシステムの破綻である。
グローバリゼーションはそれぞれの時代において果たしてきた役割があり、その光と影は世界に大きな影響を与えてきた。しかし、現在の世界が抱えている問題は、貧富の二極化を極大化する。そして、世界中の投資家たちの膨大な投機マネーが電子のネットワークを介し超流動的に運用されるということは(暴走?)、各国の通貨政策を無力化し通貨の暴落と国民生活の破綻を引き起こす危険性がきわめて高いことから、否定的な意見を持つ人達が増えている。

まず、近年のグローバリゼーションは、多国籍企業が開発途上国と呼ばれる地域にコスト削減のため、現地工場を建設することを特徴とする。投資に対する高い利潤を確保するには、工業製品製造における最大のコストである労働コストが低く、政局が比較的安定している国家への進出が重要となる。経済インフラが整っており、基礎教育が普及していれば尚好ましい。企業活動が海外に移転していった国家では工業空洞化(ホーリングアウト)と呼ばれる現象が広まり、工業労働者の賃金の切り下げや失業率上昇を引き起こす。
早い話、現在のグローバリゼーションとは労働賃金を世界最低水準まで引き下げ、一部の資本家とエリート達に富を集中させる仕組みでもある。
労働者と企業間の信頼関係を破壊し、労働者をマニュアルに従事する単なる使い捨ての生産要素とみなす風潮。会社や仕事に対する愛着や責任感を持たず、収入等の条件面のみの比較で転職を繰り返す労働者(ジョブ・ホッピング)。開発途上国では拝金主義的風潮が広まり、モラルの低下や競争社会における強いストレスに苛まれる事が多い。

通常は、長期的には先進国の賃金低下と国際収支の悪化から通貨の交換レートが下がり、国家間の経済格差が狭まることで落ち着く。各国は輸入製品に関税をかけることで、自国産業と失業率上昇を防ぐ。

しかし、アメリカに追従する日本やEC諸国の自由貿易と金融自由化過剰保護が世界の経済を限界まで歪めてしまった。
サブプライムローンに始まった金融恐慌が収まり、世界経済は回復基調にのったなどという経済評論家の話を僕は全く信頼していない。極度にグローバル化・電子化が進んだ経済を安定させる経済の仕組みはいまだ確立されておらず、マネー暴走による経済破綻は再び起こる。アメリカ、EC、日本をはじめとする世界経済の混乱と崩壊はこれから始まるのである。

日本の累積債務は一千兆円を超え、もはや通常の政策では返済不能だとも言われている。しかし保有者の大部分が日本の金融機関であることから、何とか通貨としての信頼を保っている。
しかし、アメリカの累積債務は一体どうなっているのであろうか?正確な数字が公表されておらず、オバマの政治力への期待と信頼から楽観的感想を持っている人もいるようだが、1980年代から双子の赤字として問題視され累積されてきたその総額は日本の累積債務の比ではなく、オバマの努力や才覚で解決できる問題では決してない。
EC経済に関しては何がきっかけで爆発するかわからない時限爆弾に等しい。PIIGS5カ国とは財政的に国家的破綻を目前に控えている、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインを指す。ある一国での債務不履行(デフォルト)は上記5カ国を連鎖的に破綻させる。ECはその際、運命を共にするのか、はたまた崩壊するのかという厳しい選択を迫られる可能性が高い。

現在の世界経済は密接な関係をもってつながっている。ECの危機はアメリカ、日本、そして世界のほとんどを巻き込む世界恐慌を引き起こしかねない。一体なぜ、世界はこれほど危機的な状況を招いてしまったのであろうか?

その一端は金融経済安定化を目的としたヘッジ取引が、レバリッジや空売りなどというリスクを拡大させる本来の目的から誤った金融製品を生み出し通貨や債権を不安定化させ、金融のグローバル化と電子取引による価格変動のスピード化が全世界を巻き込んだハイリスクハイリターンのマネーゲームとなってしまったことにある。

経済はギャンブルではない。通貨は国家経済にとっての血液で、必要な企業へと投資もしくは融資され、健全に運営されねばならない。個人資産は住宅積立金や傷病時の保険、老後の年金といった預金目的の違いにより、生活に必要な預金や保険ほど安全で税制上優遇された運用資産へと、高額所得者の富裕資産はヘッジ取引のような高リスクハイリターンの金融資産へと投資され、利子や配当にも高税率が課され、経済活性化のためには高額商品やサービスをどんどん購入してもらうよう仕向けねばならない。僕は中間所得層の拡大こそが国家の政治を安定させる最も効率的な手段と考えている。

これは共産主義的な思想ととられるかもしれないが、土地や、石油などの地下資源は本来個人の所有物ではない。国家もしくは世界中の人々の共有物である。
都市住宅地や商業用地・農業用地など都市計画上の用地の区分と用途ごとに税率は異なり、個人住宅なども適切な広さの土地の税率は安く、人口密集地に大邸宅を建てるなど公共目的に反する利用方法には高税率が課されるべきなのである。
石油等は、たまたま自分の国や所有する土地に埋蔵されていたから、産出されたからという理由で大金持ちになってよいものではなく、採掘等に必要な正当な労働賃金以外は環境保護や国家・世界の共有資産として扱われるべきだというのが僕の持論です。

ある国家の経済開発地区で成長が軌道に乗ったとき、土地や企業の株式に投資が集中し、実態以上に値上がりするのは経済学上の常識である。そして実態以上に価値が膨れ上がったバブルは必ず暴落する。共産主義社会については専門外なので割愛しますが、オランダ、イギリス、アメリカ、日本と歴史上例外はなかったと記憶している。
アメリカのFRBが住宅ローンバブルを放置したことで世界経済を危機に陥れたことなど、経済を学んだものにとっては必然の結果であり、ある意味国家的経済犯罪とも取れる行為である。アメリカのバブルは西暦2000年には既に注意が必要なレベルにあり、そんな状況下で金融立国を目指す?あまりにおバカな政治屋たちに頭痛を覚えたものだった。そして現在、こういう危機的状況にある国が金融機関等企業保護のために不良債権を国家が買い支えている。末期的症状と言えるであろう。

スキーでも急斜面でスピードが出すぎた時に、早いうちに上手に転べば怪我はしなくてすむ。危機的状況を引き伸ばすほど、無理と嘘を積み重ねる程、やがて来る世界恐慌は大きなものとなる。
債務不履行(デフォルト)が必ずしも国家経済を破綻させるとは限らない。不良債権の処理は債務の全体像と現在の経済状況を明確にし、関係者に公平な再建策を提示し、かつ強行することだ。その際注意せねばならないことは、個々人の不満や要求を相手にしていては話がまとまらないこと。国際社会の信頼を損なわないように誠実で確実性の高い再建プランをたて、根気強く関係者を納得させること。そして一番大切なことは国民自身が自暴自棄に陥ることなく、まじめに国家再建に取り組むことである。それらが適切な時期になされなかった時、インフレによる貨幣価値の暴落、デノミネーション、国家経済の破綻へと繋がる可能性はきわめて高い。
かつてジンバブエで起こった経済破綻はまもなく北朝鮮で再現される。ソ連経済が崩壊した時の失業や生活物資の困窮、社会の混乱はECやアメリカでも再現される可能性が高い。中国はその際アメリカに取って代わり、世界経済の中心としての地位を狙っている。その際、日本はどのような経済状況に陥るのであろうか?

2010年5月23日日曜日

ネパールの経済を発展させる施策1

ネパールの経済を発展させることは、結構かなり難しい。
内陸国にあるため、空輸以外で自由に貿易が出来ない(インド経由の陸上輸送は時間がかかり、不確実。その上国境を封鎖されると経済が麻痺するので何も言えなくなる)。現在はインドに対する反発から、中国に親近感を持つ人達も多いが、中国の影響が強くなると、今度は中国からの内政干渉が増え、反中国思想が広まるであろう。
カースト制度や男尊女卑、少数民族間のしこりも多い。(カトマンズのような都市部では少しづつ薄れつつある)

おまけに、電力不足や交通渋滞、水不足にゴミ問題と来た。・・・いや、一番の問題は無能な政治家・官僚とはびこる汚職であろう。

誤解のないように言っておくが、一般のネパール人はそんなに感じの悪い人達ではない。僕の働いているNGOのオフィスやホテルの従業員は素朴で、楽天的で、好感の持てる人達が多い。

本来、僕のようなネパールに来て一ヶ月の人間が口にするべき問題ではないのだろうが、一応政治経済を専門に勉強し、ネパールの経済発展が如何にあるべきかを真剣に考えている人間として、この国のあるべき政策を論じたい。

ネパールでの現在の主要外貨獲得手段は、観光と農産物の加工品そして出稼ぎ労働者の仕送りである。
そこで、産業を発展させるための施策として僕は低予算で可能ないくつかの政策をあげたい。

一つ目は、高度なコンテナ輸送網を構築し、インドのカルカッタまでは船舶による海上輸送、そこからパトナ等ネパール国境都市までは鉄道で、そこから先はマヘンドラハイウェイ等を使ったトラックコンテナ輸送網を構築することで、高速コンテナ輸送を可能とすること。インドの物流網自体が限界に達している今ならば、低予算での再構築提案は受け入れられる可能性は高い。既存の鉄道や道路を日本の優れた物流システム管理すれば現在とは比較にならないスピード・低価格・安全性で、コーヒーなどの商品作物の輸出、そして、産業用機械の輸入を世界中の国々と行う事が可能となる。北東部の山岳部への道路・鉄道建設は困難だが、南東部を中心に工業化を進めることが出来る。それと並行して、光ファイバーによる高速通信インフラを整備すればネパールの経済発展性は飛躍的に高まる。農業技術や機械化も遅れているが、有機栽培作や自然農法導入でインド等の高所得者層にオーガニック製品として販売することも出来る。

二つ目は慢性的な電力不足を解消すること。それには盗電と電力会社職員の汚職を解消することから始めなければならない。ネパールの実態を示す詳細なデータは入手できなかったが、インドや東南アジアでの盗電、汚職の実態は社会的にも認知確認されている。そしていくつかの地域ではそれらの問題は克服され、その為の方法論も確立しつつある。詳しくは以下のサイトを参考にして欲しい。
http://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/archives/jbic/report/review/pdf/1-4.pdf

大規模な水力発電所等が欲しいところではあるが、雨季と乾期が存在するネパールで年間を通じ安定した電力を供給することは容易ではない。多数存在する決壊寸前の氷河湖を何とか利用できないかと考えたこともあるが、僕の手に負える問題ではない。各家庭での省電力化と今後の研究が必要となるであろう。

三つ目は観光業の活性化である。まず、現在町にあふれているゴミ問題の解消すること。
次に上記のような経済援助と交換条件に、バンダを禁止、もしくは発生した経済的損害をすべて首謀者に弁済させること。
そして、交通標識や地名、地図、店のメニューを英語(と写真)で表記し、病気やトラブルのときは自国語で応対してくれる多言語対応トラブル・サービス電話窓口の設置である。日本の街は英語さえわかれば、とりあえず、地図、地名等、ローマ字で書かれた案内が多数存在するため、それほど困らない。
ネパールではそうは行かない。有料でもかまわない。観光都市を目指すのであれば、チョウメンが食べたいのであれば携帯で電話をかけるだけで、道案内から注文まで対応してくれる。チトワンに行きたいのであれば旅行会社の一覧とサービス内容にその評価が検索できる。その程度のサービスは準備してもらいたい。
ヒマラヤの山々は世界に誇れる自然遺産であるし、チトワン等、他国では見られない動植物も多い。そんで持って、ネパール人は美少年・美少女の率が極めて高い。残念なことに年をとるにしたがって、美女美男の比率は下がっていく。過酷な生活と紫外線、そして栄養過剰等が彼らの体型を損なっていくのだろう。
少し話がそれてしまったが、ネパールは豊かな自然と好感が持てる人達の多いすばらしい国なれる可能性を持っている。僕は、ネパールにはアジアのスイスのような国になって欲しいのだ。

そのために必要なのが教育、投資、そして技術援助だ。
僕が必要と思っている教育は、以前にも書いたように高等教育ではなく、人間性を重視した幼児教育だ。
そして、投資と技術援助については、単に利潤や会社の利益を求めたものでなく、共生を理想としたものであって欲しいと思っている。
僕はこの国の子供たちに、僕の持つ知識や技術のすべてを伝えてあげたいと思っている。利潤の追求ではなく、心の絆と人間観関係を大切にした社会を構築し、豊かな自然の中で人生を終えたいのだ。
日本そして欧米諸国は、かつて中国を筆頭とするアジア諸国に投資と技術援助を行うに当たって、決定的な間違いを起こしたと僕は思っている。この問題については話が長くなりすぎるので、世界経済のグローバル化についての話は後日に回します。

2010年5月19日水曜日

カトマンズ市のゴミ処理問題2






本日はカトマンズ市職員と学校関係者を含め、ゴミ処理問題の会議をした。カトマンズ市のゴミリサイクル状況には興味があったので、市の担当職員に時間をとってもらい、1日に出されるゴミの量とその内訳、リサイクルの状況と問題点を事前に調査しておいた。
ビニール袋等はプラスティックの配水管等に、プラスティックボトル等も強度等に問題があるものの再利用していた。ガラス瓶等も同様に再利用し、レンガ等の建築廃材は道路や土地の埋め立てに使っているということだった。生ゴミ等の堆肥化も未熟ながら行われており、ゴミ処理場横の庭園は多くの木々ときれいな花が咲き乱れていた。
正直、カトマンズのゴミリサイクルレベルには驚いたが、それでも再利用率は30%とのことだった。
街中で気になったのはレンガやコンクリートの建築廃材放置量の多さ。建物の耐久性に問題があるように思った。公園等にゴミ箱等がないのも問題だ。河原や空き地や路地裏等、掃除する人がいないとことがゴミだらけになる。

担当者の話では、まず予算が足りないこと。そして、西ドイツから寄付されたコンポスト用の大型機械もメンテナンスが出来ずに数年で使えなくなったこと。建設された焼却場も街中にあったために、住民からの排煙に対する苦情が多く、閉鎖されてしまったという話だった。

やはり途上国の都市問題は一筋縄では片付かない。会議では事前に資料が配布されておらず、市の責任者による現状説明のみで、重要な決定は何一つ決まらなかった。
会議が終わるとすぐに議事録を作り関係者に配布する。議事録には話の経過は書かず、結論のみを書く。必要な資料は事前に配布し会議前に目を通す。責任者はスケジュール表や予算表、活動内容の要点をまとめておく。会議の時間は守る。等、日本では当たり前のことが全く出来ていない。頭痛~~

2010年5月15日土曜日

人間教育の必要性

以前幼児教育のコーナーで、井深理論EDAペアスクールを紹介した。僕はネパールのような多様な少数民族が存在し、カースト制度のような差別が存在する社会で必要な教育は、まさに親子が一体になったEDAペアスクールのような教育だと思っている。

ネパールのような国で必要なのは、高度な微分積分でも遺伝子操作理論でもない。約束を守ること。時間・納期を守ること。嘘をつかないこと。思いやりの心を持つこと。そんな当たり前のことを一つ一つ積み重ねていくことだと思っている。

僕が両親から学んだ一番大切なことは、当たり前のことを当たり前にきちんとすることである。僕はこの年になってそれがいまだに出来ていないが・・・。
けれども僕の両親は、僕の前でただの一度も嘘をついたことがなく、約束を破ったことがなく、親戚が白地手形に印鑑を押すという大ボケをかまして、暴力団に追い回された時も消して見捨てることなく、最後まで辛抱強く交渉に当たった。

年を経るに従って、人間は色んな物が見えるようになってくる。僕の両親は聖人君子ではない。けれども、僕や姉の前では良い親であろうとし、辛い時も、怖いときも、一生懸命良き人、正しい人間であろうとやせ我慢をしていたのだ。

僕はそんな両親を尊敬している。いくら高度な知能教育を受けようとも、思いやりの心やモラルを持たず、打算と保身と世間体にのみ知力を注ぐ人間など、頭の良い昆虫と大差はない。はっきり言ってそういう人間は要領が良く、ハイセンスで、世渡り上手だ。そういう人間が教育を受けていない純朴な人間を食い物にする。しかし、僕はそういった人間が羨ましいとも、幸せそうだとも思わない。哀れむつもりも毛頭ない。昆虫の様に自分とは全く異質な生き物だと感じているだけだ。

どうすれば、このような国の人々を幸せにしてあげることが出来るのであろうか?僕はこの国を変えていくのに必要なことは、親子が一体になった早期教育だと思っている。母親だけではいけない。父親にも教育の必要性とモラル、そして子供に規範を示す矜持が必要だと思っている。多数の少数民族がいる国では共通語を幼少時から覚える必要性があるし、モラルや思いやりのある人間として人間の基礎を創る事、その為の規範を示すことは、簡単に出来ることではない。

そのために僕は皆の導きの星となるかわいい子供、アイドルを育てたいと思っている。身寄りのない子供、アウトカーストとさげすまれる子供たちが、きちんとした教育を受け、愛され、さまざまな試練を乗り越えることで、どのような人間に成長するのかを人々の目に示したいのである。

僕は、この国をより良く変えてゆく人間はこの国の人間であるべきであると考えいる。僕はこの国の教育という分野において、ほんのちょっぴり、その手助けをしたい。

願わくば、その子供たちが混迷する社会を導く星の心を宿す有志たらんことを。

2010年5月13日木曜日

後進国の経済発展を阻害する要因

後進国の経済発展を阻害する要因はいくつもある。
気候的に極端に暑い場所や寒い土地、水が手に入らない、または内陸部で海上輸送が出来ないなどの地理的要因。近代の帝国主義による植民地政策により、自国の文化が歪められてしまった例や、独裁者が圧制をひく場合などの人的要因。(貧しい国で高価な天然資源などが発見されるとこういう事態に陥りやすい。)

経済的に発展が立ち遅れている地域では、必ずと言っていいほどこういう地理的・歴史的な問題を抱えている。それらの中には人間には対処仕様のない問題も数多くあるが、人間同士が協力すること、教育によって変えていける問題も少なくは無い。ここではネパールを例にどのように経済発展を阻害する溝を埋めていけるかについて考えて生きたい。

以前、教育の原点で書いたが、人間が高度な文明を構築しえたのは、互いに協力し、道具を使い、言語と文字によって高度な連携作業を可能とし、技術を後世に残すことが出来たからである。

一方後進国と呼ばれている地域では、上記の連携はうまく行われているであろうか?
ネパールでは、カースト制度による差別、男尊女卑が根強く、効率的な分業や役割分担を阻害している。カーストが異なると対等な立場での話し合いすらできないため、有効な協議が出来ない。また、頑張っても潤うのは上級カーストの人達のみなので、下級カーストの人はモチベーションをもちえない。政府機関やNGOスタッフも学歴のある上位カーストの人たちが多く、就職の際も親族によるコネによるところが大きい。そのため、下層カーストの人たちはなかなか経済的に発展しない。
また、国が複数の少数民族から成り立っており、民族間のしこりも根強い。多数の言語が存在し、高度なコミュニケーションが取られていない。学校に入学しても母国語以外の言語で授業を進められた場合、ついていけなくなる子供も多い。教育の重要性を認識していない親が多く、家業の手伝い等で疎かにする家庭も多い
そして、高度な協力や連携作業を行う上で基本となる、約束や時間を守ることの重要性が社会的に重要視されていない。また仕事の条件が少しでも良ければすぐに転職してしまうため、基幹となる社員が育たない。
上記理由から、計画的に物事が進まず、それを当然の事として受け入れている。

僕は日本が世界的な技術大国に成り得たのは、日本国民が優秀だったからとは思っていない。日本人が日本語という単一言語を話す民族で、協調性を大切にする文化を継承してきたこと、そして第二次世界停戦による敗戦ですべての物質的財産を失い、一致団結する必要性に迫られたからだと思っている。

一方ネパールではどうであろうか、個別には優秀な文化を伝承しながらも、ネパール国民が一致団結している光景を目にすることは少ない。(バンダやお祭り等を除いて)

上記問題の原因は地理的、歴史的要因に基づくものが大半を占める。しかし、これらの溝は住民の努力によって歩み寄らなければ埋めることは出来ない。そしてこれを解決するのは教育しかないと僕は思っている。大人や親が子供たちの前では決して差別や暴力を使うことなく生活習慣から変革する規範を示すことこと。幼児のころから、他部族との共通語を学習し、他国や他民族の優れた文化と技術を吸収し、自国の文化の長所と融合した新しい文化を創ること。

これは口で言うほど簡単なことではない。自民族の文化に深い愛着を持つ人々にとっては許容しがたいことかもしれない。しかし、文化が知的、技術的に熟成し洗練されるには、少なくとも一千万単位の民族が必要となる。少数民族が変化を拒んでも時代の流れから取り残され、貧困と差別に苦しむだけである。
後進的立場にある少数民族が、民族のアイデンティティーを失うことなく先進的立場にある文化と融合してゆくには、一部民衆に差別と貧困をもたらす慣習を断ち切り、民族特有の感性・文化を練磨してゆくことではないかと思う。

たやすい事ではない。しかしこの国で、自然と調和を保った経済発展を成し遂げることが出来れば、貧困に苦しむ多くの国々にとっても、より実現性の高いモデルプランになると思うのである。

2010年5月11日火曜日

幼児教育2

シュタイナー教育では心と体の発達段階に応じた自然な教育が必要とされており、0~6歳は意思・行動力の基礎。7~13歳は感情の基礎。14歳~は思考の基礎に重点を置いた教育がなされるべきだという。彼は幼児は自然とのみ接するべきで、テレビやゲームのようなものは出来るだけ遠ざけて置くべきだと主張している。
一方、ドーマン式や石井式では、フラッシュカードを使ってゲーム感覚で子供に計算や漢字を記憶させるべきだと主張している。その際の注意点として、教材は子供の発達状態を考えて大きめに見やすく、学ぶ楽しみ、飽きる前にやめる。カードはスピーディーに見せ、テストしないよう指導している。
久保田式では、テレビはどんどん見せる。赤ちゃんは、何度も繰り返し流れるコマーシャルが大好きで、好きなコマーシャル見たら泣きやむ子がいますが、それは、赤ちゃんが自分の好きなものを選んでいるということだそうだ。

全く色々な教育法があるもので、素人にはどれが良いのか判断がつかない。しかし、自己流で理想の教育なるものを掲げてみる。


1.乳幼児期は脳神経が急激に発達する時期で、発達段階に応じ、好奇心に沿った遊び(教育)が肝要。飽きる前にやめさせる
2.子は親の鏡。子供の前でうそをつかず、約束を守り、円滑な人間関係を見せる。
3.親子のコミュニケーションは重要。そして色々なものを体験させる。 

第一期 
この時期は一番学習・適応能力が高いので、見る、聞く、嗅ぐ、食べる、触る等、五感を通し、全身で自然と世界のあらゆるものとふれあい体験する時期。きれいなもの、美しい音楽だけでなく、子供が興味を示すいろいろなことを体験させることが重要 最も重要なのは親の子供に対する接し方とコミュニケーション。学習能力が高いので読み書き、計算、外国語、社会性を身につけさせておくとそれ以降の学習効果が格段に向上する。
とりわけ読解力はあらゆる学問の基礎。絵本の読み聞かせから、本に興味を持たせ読書量を増やすことは重要。
個人的見解になるが、コンピューターに触れ、タイピングソフトから入り、音楽を聴いたり、興味があることをネットで検索しマウスオン辞書を使って読み始めたりすることは良いことのように思う。ただし、テレビゲームは刺激が強すぎ、他の事への興味が低下するるので、やらせるべきではないと考えている。

第二期 
学ぶ習慣 教養身につける 世界観の基礎身につける 公文式による個別学習や読書量を増やすことも重要
 読む考える書く習慣 成果物主義 学ぶ意義理解 調べる習慣 体験学習 基礎教育と教養
 人間や社会等、一般教養を身につけ、魂、世界と言語、知性と感性、そして人間と社会というものを理解し、自分の進みたい方向性が見えてくれば卒業

第三期
 基礎の応用を体験で学ぶ 人の目利きと付き合い方 ビジネスのスタイルと手順 自己の確立 世界観の確立 専門分野を作る 生涯学習の習慣を身につける

毎日30回はgoogleで検索し、きちんと覚える。自分がこうありたいというビジョンを持ち、情報に対する嗅覚を養う。
自分の興味のある分野や希望する進路に関連することをとことん調べる。一万回検索すれば自分の求める方向性が見えてくる。

ここでは幼児教育についてのみ扱ったので、他の部分については後日の説明にまわしたい。

2010年5月6日木曜日

幼児教育1

早期教育についての賛否はいまだに多い。しかし、幼児期の環境が知能と人格形成に与える多大な影響について異論を挟む人は少ないように思う。正直なところ、僕は早期教育の必要性を訴え、高い教材を売りつける業者に好感を持っていない。幼児期からいくつもの習い事に通わせるのもどうかと思っている。早期教育と幼児教育についての有名な理論は一通り目を通したが、その中で僕自身が効果的だと思った方法について紹介したい。自分なりの解釈も入っているので、興味のある人は本人の書かれた本を読んでいただきたい。

ソニー創業者の一人である井深氏のEDAペアスクールは、人づくりの原点は家庭にあると言っている。幼児は何でも模倣することから、親は子供の前で模範をみせねばならないと言う。約束守る。嘘つかない。思いやりの心を持つ。そういった人間として当たり前のことを子供の前できちんとすることが何よりも幼児教育には必要なものだと言う。僕はこの点を一番重視したい。現代の早期教育では知能教育が重視される傾向があるが、親子の絆を深める人間教育こそがもっとも大切な教育だと思った。

ゴードン博士の提唱する「親業」では親の子供への接し方についてもう少し詳しく書かれています。親子の絆を深め子供に良い影響を与える自立の手助けとして、親がまず子供への接し方を学ぶ。過保護、過干渉ひかえる。子供を一人の人間としてコミュニケーションをしっかりとる。子供が自分の力で問題を解決できるよう導く接し方、能動的聞き方として、繰り返し、言葉の整理、言い換え、気持ちを汲む、自分の気持ちを伝えることが重要だといいます。

井深氏は「三つ子の魂百まで」と言われるように人間としての基礎づくりは、幼稚園からでは遅すぎると言っていますが、幼児への具体的な接し方についてはあまり述べられていません。その点についての詳しい研究は久保田メソッドが良くできているようにかんじます。
 おむつ交換等これからやること目を見て話しかける話しかける。その際、単語だけでなく主語・述語のある文章で語りかける。 ガラガラは幼児の視線・焦点が合うのを確認しながらゆっくり動かす。言葉の話せない幼児とのコミュニケーションは視線と表情、手の動き等、ボディーランゲージです。相手のやりたいことを読み取り、目を見ながらゆっくりと言葉として話しかけ、まねして話し返してきたらやってあげる。こういうプロセスをきちんと辿って行けば、幼児の成長は早いのだろうと感じました。他にも、視覚神経が最も発達する幼児期に、立て抱っこで遠近感や色彩豊かな景色を見せる。ボールを使って、子どもに先を予想する練習をさせる。等、いろいろあるのですが、実際の育児に利用したい場合はきちんと本を買って覚えてください。

2010年5月4日火曜日

マオイスト

今ネパールではバンダと呼ばれるマオイストによるゼネストが全国規模で行われている。
マオイストは新憲法制定が遅れている現政府の責任として、首相退陣が認められるまで無期限にゼネストを強行すると宣言している。マオイストは外国人観光客には手を出さない旨宣言しているが、店舗の休業や車両の通行が禁止されているため、外国人観光客は観光はおろか食事にさえ不自由する日々が続いている。
むろんマオイストにそのような事をする法的権限は無いのだが、逆らうと暴行を受け場合によっては燃やされるため、民衆は従わざる得ない。実際のところ、活動しているマオイストのほとんどは農村部に住む何も知らない農民達で、無理矢理マオイストに加入させられ、バスで都市部に連れてこられ、地方との生活格差を見せつけられ、この不公平は政府が悪いと焚きつけられているに過ぎない。彼らが利用している学校施設や宿泊施設は、協力してくれなければ私達は何をするか分かりませんと遠回しに脅迫を受け、施設や食料を提供しているのだ。

今のところけが人は少なくないようだが、人が殺されたという話は聞いていない。
しかし、首相退陣など現政権が容易に呑む筈が無く、膠着状態が続けば事態がエスカレートする危険性は高い。
僕の宿泊するカトマンズのタメル地区では、夜間こっそり店舗を開いている飲食店があるが、ゼネストが長引くと観光客に出す食料等も在庫が無くなる。ゼネストは4日目だが、開いている店の数が徐々に減っている。タメル地区はそういう理由で一番食糧危機に陥りやすい。ネパールの観光を予定している人は気をつけてください。