ネパールNGOスタッフ学校設立に向けて

2010年7月1日木曜日

貧困の現実

先日流暢な英語を話す子供連れの女性に騙された。
靴磨きの仕事をしていたが、道具の箱を盗まれ仕事が出来ないという。
デリーから来たという話だったが、赤ん坊のミルクを買って欲しいと店に連れて行かれ、
1000ルピーもの粉ミルクを買わされそうになった。
ネパールで1000ルピーというのはかなりの額だ。
ふざけるな。君は働くべきだという話に戻り、
仕事が見つからない理由やだらしない両親の話、
かなりの数のインド人がカトマンズに来ているという話になった。
すべてを信じたわけではないが、
インドやカトマンズでの彼女らの生活について色々と聞くことが出来たので、
結局400ルピーの粉ミルクを買ってあげ、それで別れることにした。

ストリートチルドレンの話も友達の通訳を通して聞いてみた事があるが、
明らかに同情を引くための作り話で、本当の話は聞き出せなかった。
この町に住んでいる人の話では、都会から帰ってきた若者たちのファッションや携帯電話を見て、
カトマンズに憧れ、田舎から家出してきた子も多いという。
町にはいくつかの子供たちのグループとリーダーが居り、
物乞いをしたお金でチョコレートやシンナーの味を覚えた子供は
保護施設に入れても脱走してしまうという話は何度か聞いた事がある。
警官が定期的にそういう子供たちを施設に入れているので、
ネパール観光年の来年にはほとんどの子供が施設に収容されるといううわさもある。

僕が胸を痛めたのは、腕や足のない物乞いをしている子供だ。
きちんとした言葉は話せなかったが、どうやらインドから連れて来られたらしかった。
ネパールにはインドから来た物乞いがかなりの数いる。
交通事故等で本当に手足を失った人もいるのだろうが、
あきらかに物乞いをさせるために攫われ、手足を切り落とされた子供も実際にいる。
警察に行くべきではと友人に相談したが、警察はこんな事件に関わらないし、
この子供が施設に保護された場合、別の子供が同じ目にあう事になるといわれた。

他にもこの町に住んでいる色々な人たちやNGO経験者にも話を聞いている。
NGOのほとんどが失敗していることは以前から聞いていたが、
実際に失敗した例や体験を聞き文化の違いを改めて実感した。

NGOが本気でネパールの差別や貧困を解決しようとしたとき、
この国の政府と法律は邪魔にしかならない。
実際にNGOの名を借りて人身売買に近いことや幼児虐待をしている組織もあるようだが、
本当の理由は、差別と貧困に苦しむ子供を餌に、外国からの援助金を
上級カーストの人達が掠め取る仕組みではないかと思えてくる。

法律上は
①外国のNGOは現地のカウンターパートを介さなければ直接活動できない。
②年間10万USドル以上の年間活動費を支出している団体でなければINGOとして一般協定を結べない。(現地駐在員の)給与を除く)
③INGOとして一般協定を結んでいなければノンツアリストビサは取得できない
④旅行ビサを除くビサの取得には多くの時間と手間がかかる(それらを比較的簡単に取得するためには賄賂が必要)

その事が原因でよくあるトラブルは
①きちんとした会計報告が上がって来ず、現地経理担当者が経費を着服していた。(ネパールでは読み書きの出来ない人が多いので、きちんとした領収証がもらえない事がある。)
②海外NGOが予算を支援している期間のみ事業が行われ、その期間が終われば自分たちで維持をすることなく支援活動を中止する。
③学校や病院を建設し寄贈したが、運営がうまく行かず、放置された。
④重要な備品等を送付したが現地に届かなかった。
⑤外国のNGOは土地を保有できないので、カウンターパートを介して土地を購入する必要があるが、建物の所有権は土地所有者にあるので、知らない間に建物ごと土地を売却された。

冷静に判断して、ネパールでNGO活動などするべきではないと思う。
政府の方針に従った正規の活動をしている限り、有効に活かされる援助金はほんの一部にしかならないし、ネパールより悲惨な生活をしている国はアフリカ等には少なくない。
そもそもNGO活動などというものが豊かな生活を送っている人間の驕りなのではないかと思うこともある。

それでも誰かがこの現実を変えようとしない限り、この国を含む世界の貧困は変わらない。
それは金銭的な援助であってはいけない気がする。
技術支援と投資、そしてこの救いのない現実に立ち向かう意思と覚悟ではないかと僕は思う。